自由民主党は24日、党デジタル社会推進本部に「次世代AI・オンチェーン金融構想プロジェクトチーム(PT)」を設置し、初会合を開いた。座長には元官房副長官の木原誠二氏が就任。ステーブルコインや資産のトークン化(RWA)を通じた新産業創出を目指し、過剰なリスク回避と前例踏襲が根強い日本の金融業界の構造転換を、政治が直接主導する姿勢を鮮明にした。
自民党がこの分野に乗り出す背景には、既存の金融機関が主導してきた保守的な業界構造への問題意識がある。PTは即時決済の実現やオンチェーン経済圏の整備を主要テーマとして掲げており、銀行・証券・保険など既存プレーヤーが前例を優先してきた構造を、政治側から変えることを明確に意図している。
自民党デジタル社会推進本部は2023年・2024年のWeb3ホワイトペーパーを通じ、ステーブルコインの普及促進やセキュリティトークン(デジタル証券)の流通基盤整備を提言してきた。
今回のPT設置は、それらの提言を産業政策として具体化するための司令塔として位置付けられる。
PTが「次世代AI」と「オンチェーン金融」を切り離さず一体で議論する構図には、明確な政策的意図がある。AIエージェントが人間の介入なしに自律的な経済活動を行う時代が現実味を帯びる中、その決済インフラとしてブロックチェーン上のステーブルコインが不可欠とみられているためだ。
自民党はこの分野での国際競争が激化していることも強く意識している。米国ではステーブルコイン規制法(GENIUS法)の審議が進み、欧州は暗号資産市場規制(MiCA)を施行済みだ。主要国が制度整備を急ぐ中、日本が「Web3の中心地」を標榜しながら業界の自主的な取り組みに委ねるだけでは対応が遅れるとの危機感が、今回の政治主導という形につながった。
今回の議論を下支えするのが、日本がすでに整備してきた規制の枠組みだ。2022年の資金決済法改正でステーブルコインが「電子決済手段」として法的に定義され、2023年6月に施行された。銀行・資金移動業者・信託会社のみが発行できる体制が確立しており、制度面での基盤は整いつつある。
一方、課題も残る。パーミッションレス型ステーブルコインへの対応、AIエージェントが行う取引の法的位置づけと責任の所在、資産トークン化市場の育成策など、既存の法体系では対応しきれない論点は多い。PTは今後こうした課題を幅広く議論し、立法や規制見直しへの提言につなげていく見通しだ。
自民党が政治主導でオンチェーン金融の制度設計に踏み込む今回の動きは、日本の金融政策における一つの転換点となる可能性がある。業界の構造変革が実現するかどうかは、PTの議論の深度と、それを政策に落とし込む実行力にかかっている。
