アラブ首長国連邦(UAE)系の投資会社が、ドナルド・トランプ大統領の家族が運営する暗号資産事業「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial:WLFI)」の株式49%を5億ドル(約774.6億円)で取得していたことが分かった。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」が2月1日に報じた。
報道によると、投資を行ったのは「アリヤム・インベストメント1(Aryam Investment 1)」と呼ばれる投資会社だ。同社はUAEのアブダビ王族であり同国の国家安全保障顧問を務めるタフヌーン・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン(Tahnoon bin Zayed Al Nahyan)氏が関与しているとされる。アリヤムは2025年1月のトランプ大統領就任直前に、WLFIの株式49%を取得する契約に署名したという。
また、アリヤムの管理にはタフヌーン氏が主導するAI企業「G42」に所属する幹部らも関与しているという。G42はUAEにおけるAI・データセンター戦略の中核企業の一つとして知られている。
タフヌーン氏は、UAE大統領の実弟であり、同国における政府系資本と近い投資ネットワークを率いる人物として知られる。個人資産および国家資金を通じて、AI、データセンター、監視技術、エネルギーなど幅広い分野に投資しており、同紙はそれらの投資規模を1兆3,000億ドル(約201.3兆円)超と報じている。
報道によれば、当時のWLFIとの取引では投資額の半分にあたる約2億5,000万ドル(約387億円)が先行して支払われ、そのうち約1億8,700万ドル(約289.5億円)がトランプ家関連の事業体に渡ったとされる。また、共同創業者側の関係事業体にも数千万ドル規模の資金が配分される設計だったという。なお、この契約にはトランプ大統領の次男であるエリック・トランプ氏が署名していたとされる。
アリヤムはこの取引により、WLFIの最大株主となった。報道によると、WLFI公式サイトの開示情報では、トランプ家の持分比率が2024年時点の75%から38%に低下しており、第三者による大規模な持分取得が行われたことが示唆されていたがこれまで買い手は公表されていなかった。
また、この投資を巡って注目されているのが、その後の米国とUAEの関係の変化だ。トランプ政権下でUAEは、これまで安全保障上の理由から供給が制限されてきた米国製の先端AI向け半導体について、購入・導入を認める枠組みを獲得している。WSJによると、アリヤムに関連しているというタフヌーン氏は長年AI分野をUAEの国家戦略の中核に位置付け、米国からの先端半導体調達を最重要課題としてきた人物とされる。
一方で、WLFI側およびホワイトハウスは、今回の投資と米国の政策判断との間に関連性はないと説明している。同社の広報担当者は、トランプ大統領および政権関係者は本件に関与しておらず、政府の意思決定や政策に影響を与えるものではないとしている。ホワイトハウス側も、利益相反は存在しないとの立場を示している。
今回の報道は、暗号資産関連事業への出資を起点として、UAE王族中枢と近い資本、米国の政治、そしてAIを巡る産業政策がどのように交差しているのかを整理する材料を提供するものといえる。
参考:WSJ
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