インド準備銀行(RBI)が、2026年にインドが主催するBRICS首脳会議の議題に中央銀行デジタル通貨(CBDC)の連携案を正式に盛り込むよう政府に求めていると、ロイター通信が複数の関係者への取材をもとに報じた。この提案は、BRICS加盟国間の国境を越えた貿易決済や観光支払いを効率化し、同時に米ドルへの依存を段階的に低減することを目的としているという。
提案の中心となるのは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのBRICS主要5カ国が、それぞれ開発・運用中のCBDCを相互に連結し、直接デジタル通貨で決済可能な仕組みを構築するという構想だ。これにより、従来のドル建て決済を経由せずに貿易代金を決済できる可能性が生まれるほか、加盟国間の金融統合を促進する効果も期待される。
インドはすでに独自のCBDC「デジタルルピー(eルピー)」を展開しており、2022年の導入以降、数百万の利用者を獲得している。RBIは国内外でのeルピーの利用拡大を図っており、BRICSデジタル通貨連携はその一環と見られる。ただしRBIは、ドル依存の削減を積極的な「脱ドル化」戦略と位置付けているわけではないと公には説明している。
この動きは、アメリカとの貿易・政策面の緊張が高まる中で起きている。トランプ政権はBRICSの取り組みに懸念を示し、「反米的」であるとの発言や関税導入をちらつかせており、特にインドの輸出業者に影響を与えている。こうした地政学的な背景が、デジタル通貨を用いた新たな決済インフラ構築への関心を一段と高めている。
具体的な実装に向けては、CBDC間の技術的な相互運用性、ガバナンスルールの整備、貿易不均衡の調整手法など多くの課題が残る。各国が採用する技術プラットフォームの違いや規制環境の調整は容易ではなく、実用化には時間がかかる見込みだ。それでも、BRICS内でデジタル通貨連携が実現すれば、国際決済市場の構造に変化を及ぼす可能性がある。
|文・編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
New Atlas for Digital Assets ──
デジタル資産市場の「地図」と「コンパス」を目指して



