イタリア中央銀行は12日、許可不要型ブロックチェーン(PB)の潜在的なリスクとインフラの安全性を分析したレポートを公開した。このレポートでは、イーサリアム
ETHに代表される裏付けのないネイティブトークンの価格下落が、決済基盤そのものの停止やサイバー攻撃リスクに直結する可能性がある点が問題視されている。
イーサリアム等のPBが安定して稼働を続けるためには、ネットワークを監視・維持する「バリデータ」の存在が不可欠となる。バリデータは自らの資産をステーキングすることで、取引の正当性を検証する権利とETH建てによる報酬を得ることができる。
レポートによると、現在イーサリアムのネットワークを攻撃するために必要な最小投資額(経済的セキュリティ予算)は約710億ドル(約11兆円)以上と推定されているという。この巨額コストが、悪意のある攻撃に対する強力な抑止力として機能しているのが現状だ。
しかし、レポートはこの安全性が「報酬となるETH価格の長期的な価格維持・上昇への期待」を前提としている点を強調。問題の本質となるのは、「裏付けのないETHの市場リスクが、安全資産の決済リスクやサイバーリスクへと転換される」という構造だ。
本来、ステーブルコインやトークン化された証券は、ETHの価格変動とは無関係に価値が保たれる「安全資産」だ。しかし、これらを流通させるインフラの維持報酬がETHで支払われているため、ETH価格が暴落してバリデータが離脱すれば、安全資産を支える基盤そのものが崩壊につながる可能性がある。
バリデータの離脱によりネットワークの攻撃コストは急激に低下。この際、攻撃者は価値を失ったETHではなく、依然として価値を維持するステーブルコインやトークン化資産を獲物として狙うようになる。レポート内では、こうした局面で取引を改ざんして支払いを無効化する「二重支払い」などの不正行為が起こり得ると指摘している。
資産自体が安全に裏付けられていても、インフラが脆弱化すれば安全資産が送金不能に陥る、もしくは攻撃によって事実上失われるリスクに晒されかねない。こうした市場リスクが決済システム全体の崩壊というインフラリスクへ姿を変える点は、PBを金融インフラとして採用する際の最大の障壁となる。
また、レポートでは中央銀行が民間の投機的資産の価格を支えてインフラを守ることは現実的ではないとも明言された。その上で政策対応の選択肢として、金融機関によるPB採用を制限するか、採用を認めつつもオフチェーンでの記録保持や代替チェーンへの移行計画を事業者に義務付けるといった対応を挙げている。
今回のレポートは、分散型インフラの安全性が市場価格と密接に結び付いている現実を浮き彫りにした。暗号資産(仮想通貨)技術を金融システムへ取り込む動きが進む中、インフラ崩壊を想定した制度面での備えが急務となっている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.5円)


